はやみずの「は」

退学した

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2014年3月をもって、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程を単位取得退学した。

退学、という言葉はなかなかに刺激的だ。素直な言葉の意味としては「何か理由があって学校をやめた」というものだが、人は多くの場合そこに後ろめたい理由を想像してしまう。学校というのは卒業するのが"ふつう"だから、退学するのは"ふつう"ではないからだろう、という連想が働くからかもしれない。"ふつう"ではないということは、特に日本の社会においては多くの場合においてあまり好ましくない。

幸いにして自分の場合、"ふつう"ではない理由で退学するけれども、悪い意味で道から外れてしまったわけではない。東京大学というふつうではない大学に進み、博士課程という普通ではない進路を選び、3年でまとめるには手に余る壮大かつ面白い研究テーマに出会ってしまったがために、博士論文をまとめる時期を少し遅らせるというふつうではない決断をし、退学するに至った。 修士課程までは学位取得と課程修了のタイミングはシンクロするものだが、博士課程はそれがズレてしまっても全く問題ない。3年間博士課程に在籍して必要な単位を習得すれば、あとは規定年限以内に博士論文を提出して学位論文審査に合格さえすればよい。つまり、3年より多く在籍しても学費をその間払い続ける必要がある一方で、あとは学生という身分以外に得るものはない。そういうわけで、3年で博士論文が完成しなかった場合に単位取得退学してその後に博士号を取得するという経歴は、実のところあまり珍しいものではないけれど、世の中全体からするとふつうではないことは間違いないだろうと思う。

この4月からは、東京大学生産技術研究所の特任研究員として引き続き同じ研究室に所属している。やっている事の中身が不連続に変わったわけではないので気持ちを新たにというのもやや難しいけれど、立っている場所が変わったからにはそれに相応しい人間であるよう、やるべきことを一つ一つこなして前に進んでいきたい。