はやみずの「は」

原風景と感性

眺めているとほっと心が安らぐような風景がある。

自分の場合は、田園、里山、少し寂れた商店街、昼間なのにほとんど人が歩いていない町並み。おそらく原風景といわれるものなんだろうと思う。子供の頃に過ごした場所の景色が、象徴的に各人の心に刻み込まれているイメージの重ねあわせみたいなもの。

そういった原風景を眺めているような、じんわりと落ち着いた気持ちになれるアニメで蟲師というのがある。結構前にアニメの1期をやっていて、だいぶ間があいて去年2期をやって、この5月には劇場版が公開されるので、今からカレンダーに入れて心待ちにしている。

で、しばらく前に蟲師を観ていたら、うちの妻に「またあの辛気臭いアニメ見てるの」といわれて、ちょっとはっとした。アクションもなければ派手なストーリー展開もないしなんだったらキャラクターもほとんど出てこない、森の中や夜のシーンも多いので色彩的に暗い画面も多い、美しい風景と音が作り出す穏やかな雰囲気を楽しむアニメなので、興味がない人にとっては辛気臭いアニメといって間違いでない。このアニメをみて心が安らぐのか、辛気臭いと思うかの違いはどこにあるのか、ふと気になった。

そこで一つの仮説として浮かんできたのが、原風景に重なるか否かなのではないか、ということ。 うちの妻は東京のど真ん中出身で、話を聞いてみたらどうも彼女の原風景は並ぶ華やかなショップが立ち並ぶ都会的な街並みと、そこを歩く沢山の人達のいる風景らしい。別に緑の多い里山を眺めていても取り立てて心が落ち着くということも無く、むしろ小洒落た都会の街並みのほうが落ち着くらしい。田舎生まれで小学生の頃は山の畑で昆虫を追いかけたり、近くの渓流でイワナやヤマメを釣ったりしていた自分からは想像もつかない感覚だが、幼いころの経験から構築された原風景というのはそのくらい物の感じ方を大きく変えてしまうものであることは間違いないらしい。

逆に、全く自分の原風景と重なるものは無いけれど、蟲師がすごく好きという人がいたら、何をどう感じて好きなのか是非に話を聞いてみたいものである。